日本再興戦略で革新的医療技術を追求
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AMED、化審法について記載
日本における動物実験行政の歴史 detil4に統合した
2013年、政府は「日本再興戦略」を策定し、【革新的な医療技術を世界に先駆けて実用化していく】こと、【優れた医薬品、医療技術などを開発し、医薬品市場の世界展開】などが目標として設定されました。 この目標実現のため医療分野の研究開発を総合的に推進する司令塔機能とし、2015年国立研究開発法人【【日本医療研究開発機構】(AMED)が創設されました。
AMEDは、これまで文部科学省・厚生労働省・経済産業省にて別々に計上されてきた医療分野の研究開発に関する予算を集約し、基礎研究からその製品化にいたるまで、総合的に管理します。予算は国からAMEDに補助金として拠出され、 AMEDから、研究者・研究機関に対し委託という形で支払われます。内閣府に設置された健康・医療戦略推進本部が文部科学省、厚生労働省、経済産業省と調整を行います。それぞれの省からAMEDへ補助金等が提供され、AMEDから研究機関、研究者へ委託事業を通して研究費が配分されます。
AMEDの理事長や監事は内閣総理大臣が任命することになっており、初期のメンバーとして、厚生労働省、経済産業省、(独)科学技術振興機構、(独)理化学研究所、(独)医薬基盤研究所、(独)新エネルギー、産業技術総合開発機構から総勢102名(平成26年度)出されています。これ以外に任期の期限がある職員が200名ほど確保されています。
予算、税金
2015年度 の医療分野・研究開発関連予算は、2146億円。日本医療研究開発機構に集約される予算(日本医療研究開発機構対象経費)は1,248億円。 さらにインハウス研究機関経費が723億円。(インハウス研究機関経費とは、国立高度専門医療研究センター、理化学研究所、産業技術総合研究所等の国の研究機関が自らに措置された運営費交付金等で実施する研究開発に係る予算)。 これらに加えて、内閣府に計上される「科学技術イノベーション創造推進費(500億円)」のうち35%(175億円)を医療分野の研究開発関連の調整費が充当見込み。 これらが研究のために使われます。言うまでもなく、このお金は私たちが納めた税金です。
薬事法改正
薬事法もこの目標の実現のため、2014年に改正されました。 その名称も、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)に変わりました。
新しい法律には、医療機器の章が追加され、医療機器や再生医療の開発がより促進されるようになっています。【先がけ審査指定制度】や【未承認薬迅速実用化スキーム】など体制の構築も行われました。薬価制度も変わりました。
今までの生活習慣病用治療薬開発から、アンメット・メディカル・ニーズ(いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ)や、シーズ(=ニーズが消費者が求めているものを意味するのに対し、シーズは世の中にない新しい価値を提供し市場を開拓する種)の研究を行い、世界に先駆け革新的な医薬品、医薬部外品、再生医療品を、もっと世界の市場に出していこう、そのためには、産官学が連携し、縦割り行政ではなく、省庁を横断した取り組みが行われなければならないと、日本をあげて取り組んでいます。
新たな安全性試験法
世界より早く、質の高い医薬品、医療機器、再生医療技術を開発するには、スクリーニング試験、非臨床試験(動物実験など)なども含めた製造過程に係る時間を、精度を落とさずに短縮しなければなりません。動物実験はお金も時間もかかるため、お金も時間もかからない方法が渇望されており、そのための研究が行われています。
医療分野研究開発推進計画の中に、レギュラトリーサイエンスの推進があり、新たな品質公定試験法や動物代替法試験法やなど新たな安全性試験法の開発を行うことを目標に、2014年度は8億5千万円、2015年度は12億5千万円が計上されています。(レギュラトリーサイエンスとは、「科学技術の成果を人と社会に役立てることを目的に、根拠に基づく的確な予測、評価、判断を行い、科学技術の成果を人と社会との調和の上で最も望ましい姿に調整するための科学」)
AMEDが研究の司令塔なら、その新薬の審査は(独)医薬品医療機器総合機構 (PMDA)が行います。PMDAは2004年に設立され、治験前から承認までを一貫した体制で指導・審査(承認審査)する等の業務を行っています。PMDAはAMEDと新薬創出へ向けて、2015年連携協定を結びました。また同じく2015年、PMDA国際戦略2015を策定・公表しました。同じ日に 厚生労働省も国際薬事規制調和戦略を策定、発表しています。
研究の現場で3Rsが徹底して実施され、審査で動物福祉についても根拠を含めて審査されるよう、代替法の更なる研究と普及のための活動、そして、代替法を研究の現場で実際に使っていくようになるための仕組みの構築が求められます。
日本は化学工業大国
2013年日本の化学工業の出荷額は、中国、アメリカに次いで世界第3位。 産業別研究費の製造業に占める割合は、2兆4,869億円で全体の22.1%です。
化学物質の悪影響を最小化するという世界目標
2002年に開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD) において、【化学物質が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で製造・使用されることを2020年までに達成する】という目標が採択されました(WSSD2020)。 その後、2006年に第1回国際化学物質管理会議(ICCM-1)が開催され、国際的化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)が採択されました。
2020年に向け、各国で化学物質の安全性評価や必要な法律改正が進んでいます。欧州の化学物質規則(REACH)は2007年に施行されました。REACHでは化学物質の安全性は製造者・輸入者に安全性評価を義務付けているのが特徴です。アメリカでは化有害物質規制法(TSCA)の改正について、2015年12月現在アメリカの議会で審議がされています。
化審法改正
日本では2009年に化学物質を管理するための法律である「化審法」が改正されました。 (2011年より完全施行)。既存化学物質も含め全ての化学物質の安全性の評価をすることになりました。 この法改正の際、動物福祉の面においては、衆議院の付帯決議で、【QSARの手法、計測、リスク評価、に関する専門家育成の検討や、学校教育における化学物質に関する教育内容の見直しを図ること】が、また、参議院の付帯決議の中で、【動物試験の代替法の開発・活用を促進すること】が記載されました。
2016年4月に前回の改正より5年が経過することから、化審法施行状況検討会が開催されており、議論が重ねられています。 労働安全衛生法も改正され、化学物質のリスクアセスメントの実施が事業者の義務となります。2016年6月までに完全施行となります。 日本では、WDS2020目標のため、経済産業省、環境省、厚生労働省などで、それぞれに関連する分野における化学物質の有害性試験や暴露評価、リスク評価が始まり、毒性の評価等のため、多くの動物実験が行われました。
■【化合物安全性研究所】動物実験代替法を事業化‐2012年4月から受託スタート
■【生物研】動物使わない安全性試験法開発‐化粧品等の代替法へ期待 (2013/8/19)
動物から細胞、コンピューター利用へ
一方では、動物を使わない研究も多く行われました。 化学物質のリスク評価を迅速化、より精度の高い安全性試験を行う手段として、iPS細胞やin silico((化合物の構造とそれに対応する代謝酵素などをデータベース化し、コンピューターで予測する)、臓器モデルなどが研究され、結果として動物を使わない代替法が研究されることにつながっています。
例えばQSAR(化学物質の構造等と性状との関係になりたつ相関)を利用する方法があります。これを利用して、新規の化学物質の毒性を、類似の構造をもつ化学物質から予測するというものです。2015年の経済産業省の資料では、動物実験を行うことなく、生体毒性の予測値を得ることが可能と考える、と書かれています。しかし動物実験の代替として現実に使うという段階にはいたっていません。
また、日本化学工業協会の2015年度事業計画には、【動物実験代替法の普及と活用推進】があげられています。今後一層、時間と正確さを追求し、そして動物福祉の観点から動物実験を代替する研究は、業界内側から加速していくと考えられます。 日本化学工業協会は国際化学工業協会協議会のメンバーであり、国際協調が進んでおり、その活動やOECDの化学品プログラムなど化学を巡る状況は刻一刻と変化しています。
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